トラベラー
first day 〜2 |
授業も終わり、誰もいないパソコン室でミリーとキラは話していた。 「で、どうゆう事なの?」 じろりとミリーを見つめると、観念したようにミリーは苦笑した。 「えーっとね…まぁ、本当に付き合って欲しいのよ」 「はあ!?」 その大きな声に、キラが変な勘違いをしたと思い、慌てて手を振った。 「付き合うってのは、お店に行くとか…そうゆうこと!」 「うん。…びっくりしたぁ…」 ごめん、とミリーは苦笑した。 しばらく唸ってから、ミリーは真剣な表情で話し始めた。 「今日、新しく開発されたタイムスリップの装置の公開日でしょ?」 そういえば… と、キラも思い出した。 どこかの大手会社がタイムスリップの装置を開発したらしい。 それの実験も無事成功したことから、本日めでたく一般公開となったのだ。 タイムスリップには興味はあったが、自分が別の時代に行くなど、到底考えられるものじゃない。 その時代には自分の知っている人間など一人もいないのだし。 「うん、それが?」 「それで、一般の人に何名か抽選で使える人が決まったでしょ?」 「……………」 そこまできて、まさか…とキラは目を細めた。 「もしかして…ミリー……当たった……?」 「よくわかったわね!」 いや、まぁ… あれだけ先に関連することを言ったら、誰だってわかる気がするんだけど… 苦笑して、キラはミリーに何が言いたいのか促した。 「じゃあミリーはあれの試験者になったんだ」 「うん。まぁ…そうなんだけど…」 歯切れの悪そうな声に、キラはいぶかしげに思った。 そしてミリーは言葉を継いだ。 「私いけなくなっちゃたの!」 「…え…じゃあそれどうするの?」 「だから…キラ、これ貰ってくれない?」 手渡されたのは何かのカード。 要するにこれがチケットのようなもののわけだ。 今日は何もなかった筈だし、別にいいかな… 「………いいよ。貰う」 「本当?!良かった!」 「あ…でも、本当に大丈夫?」 「?何が?」 「だって…名前とか、決まってるんじゃないかな…?」 「あぁ…それなら大丈夫よ。それ、名前とかないから」 あっさりとミリーは言い、仕方なくキラはそれを受け取った。 仕方なく、とは言ってけど、興味があるのは事実だ。 でも、せっかく抽選でやったのに名前書かないなんてな… 無用心じゃない…? 疑問に思ったが、自分が考えてもどうしようもないことなので、頭の奥に引っ込めた。 「じゃあ、ありがたくもらうね」 言って、キラは微笑んだ。 *********** 会場に来て、キラは口を大きくあけてしまった。 だって… なんですか… この大きさ… 野球のドーム場数百個入りそうな広い敷地に、大きな門。 ここが会場。 と、同時にここの会社の社長の住まいらしい。 一般市民であるキラには考えられない大きさだ。 取り合えずボーっと立っているわけにもいかず、キラは中に入っていった。 大きいのは中に入っても同じで。 やっぱりお金持ちの人は感覚が違うんだろうなぁ… とか妙に納得していた。 会場はここの庭らしく、実はこの会場に入るのさえ抽選で決まっていた。 防犯対策なのか、監視カメラも沢山ある。 何か恐ろしいところに来ちゃったかも… そう考えても後の祭りなので、キラは意を決した。 |