トラベラー
first day |
その日は冷たい風が吹いていた。 自然が作り出す風と、人の波が作り出す風。 どちらも寒い。 それは一人だからなのか そんなことはわからない けれど ただ、その日はどうしてか身に凍みる。 ふと、通りの向こうを見た。 男女のカップルが、ぎこちなそうに手を握っている。 傍にいる暖かい存在 それがないから寒いのか でも、そんなものがなくても自分はここにいるのだ どうして自分はここにいるのか 何かやることでもあるというのか 意味の無い世界 理由が見つからない どれが本物? どれが嘘? それとも 全て偽者? 自分にとっては灰色の世界であり、色の見えない世界 生きる理由がわからない 「はぁ…」 溜息をついて、空を見上げた。 灰色に染まる鈍い色の空。 まるで自分の心のうちを表しているようで、少し嫌になる。 暫くして、白い花びらが頭上に降り注ぐ。 「雪……ね……」 今日は天気のはずだったのに… 暗澹たる気分のまま足を進めた。 彼女の名前はキラ・ヤマト 現在通っている学校に行く途中。 ******* 席について鞄を横に掛ける。 と、その前に… 読書をするための本を取り出しておく。 漸く落ち着いたので、本を読む。 が、 「おはよ〜キラ」 この声は… 後ろからやる気なさげな声がして、キラは振り向いた。 「おはよう、ミリー。どうしたの?」 そこにいたのは茶髪の女の子。 ややカール気味の髪に、オレンジ色のワンピースを着た活発そうな子だ。 彼女の名はミリアリア・ハウ。 通称ミリー。 キラとは同級生で、よく話をする仲良しだ。 ミリーはうんざりした顔で机に突っ伏した。 キラは目をぱちくりさせた。 今日はいつもより元気ないみたい… そのまま動かなかったが、いきなりがばりと起き上がると、 「今日も頑張るわよ!!」 ガッツポーズでミリーは拳を握り締めた。 「…?」 何なんだろう…? よくわからないのでぼんやり眺めていると、ミリーはキラの方に視線を向けた。 その視線がやけに鋭いので、再び目をぱちくりさせた。 「というわけで、キラ!!」 「は、はい?!」 反射的に声を出すと、ミリーはにんまりと微笑んだ。 何か…嫌な予感が… 「ちょっと付き合ってねvv」 「う…うん」 結局、理由も聞かずに頷いてしまったのだった。 |