不思議な巡りあわせで
「来ないね」 「そうだな…」 『…………ハァ……』 二人は顔を見合わせてため息をついた。 帰るための車を待って、数十分。 いまだに来ないそれに、カガリは早くも苛つき始めていた。 それはレイも同じだったが、例の場合は好奇心の方が勝っており、カガリほどではなかった。 だが・・・ 「ちょっとレイは待ってろ」 見てくる、と言ってカガリは荷物を置いて走り出した。 何か言う暇も無く走り去ったカガリの後姿を呆然と見ながら、レイはカガリらしいなぁ・・・と妙に一人で和んでいた。 不思議とカガリとは通じるところもあって、何故だか安心できた。 カガリがいて本当によかったと思う。 そんな感じでのほほんとまっていたけど、やっぱり少し疲れてきた。 ただ待っているのは意外と疲れる。そんなことを改めて認識した。 ん〜…何か暇だな… と、視界に入ったのはテラスのある喫茶店。 「少しぐらいいいよね…」 うん。そうしよう。カガリが来てもわかる場所ならいいよね。 自分を納得させてレイは喫茶店に入った。 カガリが来てもわかるようにテラス席に座り、今日買った本を広げる。 別に本が好きだから、というわけでもないけど何かやることがあると安心できる気がした。 何か集中できることがあるのはいい事だと思う。 その時 ・・・あれ・・・? 前にもこんなことがあったような気がする・・・ 変に息苦しい気がした。 前にも同じように別のことで、嫌な事を考えないようにしていた。 嫌な事・・・? って、なんだったっけ・・・? 引っかかるけど思い出せない。 否、思い出したくない気がした。 なんか・・・いやだ やだやだ・・・と胸のうちで繰り返している時、ふと何か音がしてレイは顔をあげた。 目に映ったのは黒い物を持った人影。 銃・・・・? その銃口はこちらを向いている。 「青き清浄なる世界のために!!」 「!!」 危ない!!と思った時には、すでに体が動いていた。 とっさにテーブルを蹴り上げ、それを盾にして影に隠れる。 その瞬間銃口が火を吹いた。 ズガガガガ!!! 鋭い音をたてて弾丸が飛び交った。 どうなっているの!? 混乱しつつもテーブルの影からあたりを伺う。 悲鳴をあげ逃げまどう人々の中に応戦している人間がいた。 「かまわん、すべて排除しろ!」 あの人だった。 お店で会ったアロハシャツを着た人。 命令するのに慣れた口調で周りに指示している。 手際よく命令し、着実に襲撃者達を倒していくのは凄いとも言えた。 ・・・まただ・・・ 聞こえる悲鳴 響く銃声 壊れていく風景 その全てが見たことがある気がした。 そして・・・・自分が・・・・ 壊れゆく都市。 呼ばれた名。 『キラっ!!』 キラ・・・? 藍色の髪、その下にのぞくエメラルドグリーンの瞳。 君は・・・・誰・・・? 急に頭が痛くなって、その場にうずくまった。 「死ね!コーディネイター宇宙の化け物め!!」 襲撃者が口々にそう叫ぶのが聞こえる。 「化け…物……?」 『コーディネイターって、遺伝し組み替えて』 やめて 『化け物は、化け物同士戦えばいいのよ!』 「私…化け物じゃ…ない…」 自分達は彼らと同じ…人間なのに… その時、耳元で鋭い声が響いた。 「何をしている!早くしろ!!」 その声は思考の渦に飲まれていたレイを現実に引き戻した。 銃声が入り乱れる中はっきりと聞こえるその声に、レイは呆然とその人間を見上げた。 銀色の髪が風にたなびく。 太陽に反射して輝くそれに、一瞬で目が奪われた。 そして、彼の手にもまた銃が握られていた。 こんな綺麗な人まで…何故戦わなくちゃいけないのだろう……? ドサッ… 近くでテロリストたちの一人が銃に倒れた。その拍子に目の前へ銃が転がる。 それと同じく赤い水溜まりが足元へと広がった。 赤い血。 それは皆同じ… 呆然と様子を見ていると、視界の隅でキラリと光るものに気が付いた。 壁に身を潜めてこちらを伺っているテロリストの銃。 銃口がアロハシャツを着た人に向く。 「危ない!!」 レイはとっさに手元にあった皿を手に取ると、それを勢いよく投げつけた。 「っ!!」 みごとに命中し、男は一瞬怯んだ。その隙に顎を蹴り上げる。 男はよける暇もなく倒れた。 その直後、男は銃弾を食らって動かなくなっていた。 私が・・・殺した・・・? 思わず自分の両手を見つめる。 手は震えていた。 力んでいた手のひらは赤くなっていて、それが血の色に見えて。 隠すようにこぶしを握った。 気がつくと、すでに周りは人々の声でざわめき、戦いが終わったことを示していた。 「何で…」 わからない…とレイは呟いた。 顔を上げると、アロハシャツを着た人と銀髪の人が訝しげにこちらを見つめていた。 レイはすぐに視線をそらす。 しかし、彼らがまだ見ているようで、レイは居心地悪そうにうつむいた。 が、彼らに仲間らしき人が話しかける。 「隊長!ご無事で!?」 隊長…? 男はレイの方へ目をやり、言った。 「あぁ私は平気だよ。彼女のおかげでね」 そう言ってニヤリと口元に奇妙な笑みを浮かべた。 → |
あとがき
レイの心情が長すぎ・・・でしたでしょうか?
早くも記憶の断片を見つけております;;