不思議な巡りあわせで 




第三章


失われたもの





カガリは岩の上でぼんやりと空を見上げながら少年のことを考えていた。

思い出すのはアメジストの瞳、栗色の柔らかそうな髪、ふくよかな唇、高熱によって上気した頬
・・・・とそこまで考えて体全体が熱くなった気がした。


―――?・・・・・何なんだ??
この気持ちは・・・
少年のことを思い浮かべるだけでそんな気持ちになる。何故なんだろう、そう思うカガリだった。



物思いに耽っていると、テントからドクターが出てきた。

どこか憔悴したような、困惑の表情だ。


―――どうしたんだ?
そう思いドクターに近づくと、それに気づいたのかドクターは突進する勢いで近づいてきた。
声をかける暇も無く手をつかまれぐいっと手を引かれる。



「うぇっ!?」



引きずるようにテントの中へと引き込まれる。と目の前には先ほどの少年が眠っていた。




「カガリさん・・・・落ち着いてよくきいてね?!」




おちつくのはドクターだろ・・・と呆れながら、どうしたんだと聞いてみる。
その言葉に少しは落ち着いたのか少年を指差していった。




「この子、コーディネイターよ。しかも女の子!!」




「・・・・・・・・・・・・・?!」




その言葉を理解した瞬間、カガリは言葉を失った。

前者には全く驚かなかった。
なぜならあんなMSを操縦できるのはコーディネイターぐらいであろうと思っていたから。
しかし後者は別だ。第一・・・・




「胸が無かったじゃないか?!」




そう、先ほど腕に抱えてきたときも、そんな感じはしなかった。


「ベストを着込んでたの・・・まるで女の子だとわからないように」

「?」


何故そんなことをする必要があったのだろう。
疑問がカガリの頭をぐるぐると回った。
が―――


「・・・う・・・・ん・・・・・・」


その声によって思考は中断された。


「どうしたのかしら?・・・・・大丈夫・・?」


ドクターが即座に話しかける。

少年、いや少女は首を左右に振りながらシーツを握り締めた。
起きているわけではないようだ。
そのことに少しがっかりしながらも、少女の唇が動いたのを見て耳を寄せる。




「ごめん・・・・・・なさい・・・」




―――ごめんなさい??

少女はうわ言の様にごめんなさいと呟いていた。


―――誰に謝っているんだ・・・・?・・・・お前は・・・・




カガリが呆然とする中、少女は最後に一言つぶやいた。






「・・・・・・アスラン・・・」







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