不思議な巡りあわせで







「キラ…?」





どこか傷ついた瞳のアスランに、キラの心は揺れた。



アスランと一緒にいたい。

でも、そうできない。

プラントには、いけない。


だって、自分がストライクのパイロットと知れてしまったら、アスランが酷い事を言われるのは目に見えている。

もう…

迷惑は掛けられない…



目を閉じると、きっと前を見据えた。




「プラントには……行けない」


「キラ!!…また、俺と戦う気か…?」

「そうじゃない!!」




強く否定された言葉に、アスランは同様した。




「じゃあ…どうして…」


「もう…戦いたくない…でも、プラントには…いけない…私は…裏切り者だから…」


「そんなことっ!」


「君が許してくれたとしても、世間の人たちはそうは思わない!!…裏切り者を庇えば…君は……」




言いよどんだ後、キラは口にした。

言ってはいけないことを。






「君は…私といると不幸になる…だから…一緒に行けない…」












「何だよ…それ…」




その声は、地を這うような恐ろしい声だった。

思わずびくり、と後ずさりする。

が、アスランはベッドから足を下ろし、キラに近づいた。

しかし、まだ傷も癒えてはいない体のせいか、アスランの体がぐらりと揺れた。




「っアスラン!!」




慌ててキラが駆け寄ると、アスランはキラの伸ばしてきた手を、がしっと掴んだ。



「アス……」


「母上は…俺を置いて死んだ…キラまで…俺を置いていくのか…?」


「え……?」



呟いた言葉に、呆然とアスランを見つめる。


今、彼は、何と言った…?



「死…んだ……?」



呟くと、アスランは悲しく笑った。




「キラは知らなかったんだな…」



「え…?」




「血のバレンタイン…あの日、母上もあのコロニーにいたんだ」




頭の中が真っ白になった。


死んだ…?

レノアおばさんが…?


アスランに言われても、何だかピンと来なくて。

今でも、一緒に暮らしているものなのだと思っていたのに。


うちのお母さんと違って、落ち着いた雰囲気の人だった。

でも、優しくて、時には叱ってくれて…


でも…

死んだ…?








もう会えない





そうわかった時、不意に頬に何かが流れた。

片手を頬に当てると、濡れた感触だった。


悲しくて

何も知らなかった

何も知らないで

アスランと戦って





ユニウスセブンが破壊された時、何を考えていた?

アスランがつらかった時、自分は何をしていた?


ストライクに乗るとき

考えた?



何も考えていなかったのかもしれない。

ただ状況に流されていたのかもしれない。


そんな自分が惨めで、恥ずかしく思えて、キラは静かに涙を流した。






「…ごめんなさい……」




アスランがつらいとき、何もしてあげられなかった。

何も、考えていなかった。




「ごめん…なさい…」




ただ涙を流していると、そっと頬に暖かいものが触れた。

俯いていた顔をそっとあげる。




「キラ…泣かないで…」




こぼれる涙を、アスランが舌で舐める。

その行為に驚いて、頭の中が真っ白になった。




「ア…アスランッ」



頬を真っ赤にして怒鳴ると、アスランは漸く止めた。

そして、そっと抱きしめた。




「落ち着いた?」



耳元で囁かれる。

低い声に、心臓がどきりとはねた。

顔をあげると、アスランの美麗な顔があった。


二年前とは違う、大人びて、精悍な顔つき。

エメラルドの瞳が、自分を写していた。











「もう…あんな思いはしたくない…だから…俺に……キラを守らせて」










じっと見つめられれば、もう、何も言えなかった。


やっぱり、アスランと一緒にいたい


もう、離れたくない




そっと、キラは頷いた。




「うん……アスランと…プラントへ行く」






決意を胸に秘めて。












あとがき
……めっちゃ書いててハズイです…








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