不思議な巡りあわせで






「ちょっと待て!!」


『!!』


突如響いた声にキラとイザークは目を丸くした。

声に方向に目を向けると、そこにいたのは





「カガリ?!」





何でカガリがここに?!

と思っていると、カガリは焼け付くような視線をイザークに向け、怒鳴る。



「貴様っ!!聞いてればキラをプラントに連れて行くだと!!そんなの許さないからな!」


「は?!何で突然現れたやつにそんなこと言われなければならない?」



ふん、と鼻を鳴らすとイザークはカガリを一瞥した。

が、次にカガリの言った言葉にイザークもさすがに目を見開いた。




「キラは俺の妹だ!!勝手に連れられてたまるか!!」




「………え……?」

「妹…??」



今何と言った?

妹?

と言うことは




「カガリが私の…兄?」



呆然とつぶやいたキラに、カガリもさすがに怒鳴ったのはまずかったかとばつが悪そうに頭に手を当てた。





「そうだよ…覚えてないかな…?」



「え………」



「昔オーブの首領邸に来たことがあるんだ。その時…な…」



カガリが言うことに思いあたる節があった。



一度だけ言ったことがある気がする。

いつもとは違う服を着せられて、あの時母さんが…


《キラのお兄さんに会いに行くのよ》


って…言って

自分に兄弟がいたんだって喜んだな…

それで行った先に居たのが、金髪の男の子…

太陽みたいに光に反射して凄い綺麗だなって思った。

はじめましてって言って、挨拶したらあの子も嬉しそうに笑って…


かがりだ!よろしくな、きら!


笑った顔が凄いまぶしくて…思わず微笑んだ。






「ええええぇぇぇっっ!!…うそっ!あれがカガリ?!」






「思い出したのか?!」






嬉しそうにカガリが言った。

咳き込むようなカガリの勢いにキラはうん、と小さく頷いた。





「あの…でも…」


「?どうしたんだ?」



確かにカガリは自分の兄だといわれた。けど、




「カガリの名前って…カガリ・ユラ・アスハ…じゃなかったけ…」



「そうだぞ。それがどうかしたか?」





しかしそれに答えたのはキラではなかった。




「アスハだと?!…オーブの…ウズミ・ナラ・アスハの一人息子…?」



「確かにそうだが…それがどうした?



当然のように言うカガリにさしものイザークも頭が痛くなった。

何故オーブの王子がここに居る?

しかもキラの兄だと?



「…キラの兄だというのは分った。だがそれでキラがプラントに何故反対する?」





イザークが真剣に話すとカガリはイザークをぎっと忌々しそうに睨みつけた。




「分らないのか?…つまりキラはオーブの姫だということだ。だからオーブに戻ればいい」


『!?』


オーブに?

キラの心が揺らいだ。オーブに戻れるのならその方がいいのでは、と思ったのだ。

でも…やっぱり…

縋るようにイザークを見つめると、彼は一つ頷いてカガリに言った。




「オーブの姫だと言うのも分る。だが、キラはプラントに行きたいと言ったんだ」



「それはお前が言わせただけだろう!…キラ傷つけておいて…幸せにできると思ってるのか?!」



「!!」



う…と痛いところを突かれイザークは押し黙った。

キラを傷つけたのは…自分だ…

キラを殺そうとしていたことも事実…

そんな自分が、キラを幸せにすることができるのか…?





「…覚悟がないのに…勝手なことを言ってキラを惑わすな!!!」




覚悟がない…?




「覚悟がないだと…?……ふざけるな!!……俺はキラが好きだ!だからこそ守りたい!必ずだ!」



真摯なまなざしにカガリはぐっと押し黙る。

だが、すぐに負けじと言い返した。



「好きだなんて言葉で信用できるか!」



「誰にでも好きだと言うわけがないだろう!!…それとも貴様は誰にでもそう言うのか?」



「!!!言うわけないだろう!」



「ふん。ならそういうことだ」



そのまま二人は睨み合う。取っ組み合いに発展するかと思われた瞬間、ソプラノの声が響いた。






「やめてっ!!………もう…やめてよ…二人とも…」







キラの叫びに、イザークとカガリはハッとキラを見た。

俯いたままベッドの布をぎゅっと握り締めている。

震える手を、イザークはそっと握った。






「!…ありがと…イザーク…」



キラは目にカガリを捉えて、一度イザークの手を握り返した。






「カガリ…私は…プラントに行きたい」



「キラ!!」



咎めるような、傷ついた様子のカガリに胸が痛んだ。

でも、私は




「行って…私にできることをしたい。…それが、私がMSに乗って、沢山の人達を殺した償いになると思うから…」



「キラ…」




何か言いたげなイザークにキラはそっと微笑んだ。


それまで黙っていたカガリが言った。





「…………それで………いいのか……?」



「!…カガリ…」




驚いたキラの表情にカガリはふっと笑って、しょうがないなぁ…とつぶやいた。

そして




「わかった。キラがそういうなら、いいよ…」



「ありがとう!カガリ!」



「でも!…お前の帰る場所は…ここにある…それを忘れるなよ…」




そしてカガリはあの時のような眩しい笑顔をキラに向けた。

イザークには少しにらみつけて。



何だか娘を嫁に出す父親みたいだな…と内心苦笑した。

おそらく父上にこのことを言えば嘆くだろうと思う。

何せ父上もキラ好き…というかキラ馬鹿だからな。

ま、自分も人のことを言えないが。


イザークと笑いあうキラを見て心は痛むが、それよりキラが幸せであることが何よりも大事だと思う。

だが、あのイザークとか言うやつにキラを独占させてたまるかと、カガリはイザークに言った。






「キラを泣かせたら許さないからな!!」








目を丸くした二人を見ながら、カガリはそのまま部屋から出た。が






ガチャ…

硬い金属音が耳に響いた。




「っち……」



少し視線をずらすと耳元に銃口。

いつのまにやら銃を向けた兵士に囲まれていた。



「ったく…優秀な部下だな…」



「それをかわしてきた君も凄いと思うけどねぇ」



陽気な声がして、見るとそこには



「砂漠の…虎…」



アンドリュー・バルトフェルド


いわずとも知れた砂漠の虎が、興味深げにこちらを見ていた。




「話は聞かせてもらったよ」


「はっ盗み聞きか…失礼なやつだな」


「勝手に入ってきた君も人のこと言えないと思うけどね?」



カガリはむっとして睨み付けると、虎はやれやれと手を振って部下に命じた。



「彼を外に連れて行け。くれぐれも丁重に」


「キラに手を出したら許さないからな!!」



銃で小突かれながらカガリはバルトフェルドに怒鳴った。













兵士に連れられて、カガリは虎の住む豪邸の玄関へと連れてこられた。



「……?」



何にもされなかったことに驚き、カガリは振り返った。

赤毛の少年がにらみつけるが何も言わない。

カガリはそのまま街中へと入った。



どうやら見逃されたらしい。

オーブの王子だと言うことがばれたからか…


視線を向けるとキサカが大急ぎで走ってきた。

必死な形相にカガリは思わず吹き出した。


だが、生暖かいものが頬を伝う。



キラ…幸せに…なれよ…


カガリにはそれしか願えなかった。









あとがき
長い…
カガリがなぁ…とか思いながら悲しめな結末…




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