不思議な巡りあわせで






暖かい…


だるかった体に暖かい光が降り注ぎ、アスランはゆっくりと重い瞼を開いた。


まぶしい…


暖かい光の中に自分はいた。


見知った光に手を伸ばすと、光はこちらを見て笑った気がした。


そして、手が触れると霧散するように光は消えた。


ハッと気付いて手を伸ばし、名を叫んだ。








「キラ!!」






























「っ……」


うっすらと瞳を開くと、夕暮れに染まる世界があった。

起きあがろうとすると肩がズキッと痛んで思わず肩を押さえた。

ふと右足に、暖かい重みがあることに気づき、アスランは視線を向けた。












「っ…キラ…?!」




一瞬驚いたが、キラがいることにほっとした。

静かに寝息をたててぐっすりと眠っている。




「良かった…生きていて…」




そして、静かにキラの頬に手を伸ばした。




「ん…」




微かに身じろぎしてキラが動いた。




「キラ…」




呟けば、キラはハッと目を開いた。


「アスラン!大丈夫?!」


せき込んできいてくるキラにアスランは苦笑しながら答える。


「大丈夫だよ」


そう言った瞬間、キラは微笑んだ。

そして目尻から流れたものを見て、アスランは慌てた。




「キラっ?!」


「良かった…本当に…」


肩を震わせて涙をこぼしたキラを急に抱きしめたい衝動に駆られる。

その想いのままキラの肩を引き寄せた。

一瞬キラが震えたが、静かに身を任せた。

そのことが嬉しくてアスランはさらに強く抱きしめる。


「頼むから、もう居なくなろうとしないでくれ…」




泣き出しそうなアスランの声にキラは目を見開いた。





ごめんなさい…


…ありがとう…










初めてだったのかもしれない。

記憶が戻った今、ここが居心地が良いと実感したのは。

記憶が無い内はただなんとなくという感じだったけど、この温もりから離れたく無いと強く思った。



ぎゅっとアスランの服の裾を握ると強く抱きしめられる。

アスランの匂いに甘えるように顔埋めた。


「…もう離れるな…」


その言葉に顔を上げずに、うんと頷いた。








「俺はお前が好きだ」


次いだ言葉に頷こうとしてその意味に気づきハッと顔を上げると、アスランはじっと見つめていた。

真剣に見つめられてキラは顔を赤くしてうつむいた。

が、アスランが顎に手を当て顔を上げさせられる。


「…ア…アスラン…?」


狼狽するキラに、アスランは優しく微笑みかける。


「離れてからずっと気になっていた。キラがいなくなって…でもまた会えると思っていた…
けど、会った時、お前はMSに乗っていた」


「っ!!…ごめん…なさい…」


謝ることしかできない、だってそれは事実だったから。

たとえどんな理由であっても、アスランと戦ってしまった事に変わりはない。


だが、アスランはゆっくり首を振ると、キラの頭を撫でた。


「いいんだ…こうして、今話せるから」


「でもっ…」


まだ言いよどむキラに、アスランは苦笑すると頭を撫でた。

まるで子ども扱いにされた様に感じて、キラは頬を膨らます。


「やっぱり、キラはキラだな…優しくて甘ったれで、でも頑固」


「なっ!…」


顔を真っ赤にさせるキラに、アスランはますます笑った。

だが、急に真剣な表情に変わる。

どきりと、キラの心臓がはねた。






こういう顔は反則だ…


だってかっこよすぎる。



昔、アスランを見て騒いでいた女の子の気持ちがよく分った。





「な…何…?」


「キラ。一緒にプラントへ行こう」


「…え……?」








プラントへ行く…?

私が…?




固まってしまったキラに、アスランは眉をひそめた。


「キラ…?」


肩に手を置こうとすると、キラは怯えたように後ずさりする。

そのまま壁際まで行こうとするキラに、立ち上がって近づいた。



「!!!」




近づいてきたアスランをキラは突き飛ばした。


「ごめんなさい…」


言ったキラの瞳は、銃を持ったときと、同じ顔をしていた。



















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