不思議な巡りあわせで







ふわりと頬を優しい風が撫でた。


…?


「か…ぜ…?」


霞がかった世界に光が差し込む。


「っ…」


目を開けると、夕焼けが紫色に染まり日が沈む途中だった。


「…え…どうして…ここにいるんだっけ…」


ああ…そうだ…

…思い出したんだ…

自分がだれか…

そして何をしていたか…








「…ストライクに乗って…地球に…落ちた…」


呆然とつぶやいて、自分の手のひらを見つめた。


「…どうして…助かったんだろう…生きる意味なんて…私には…ないのに…」


そう呟いた時、ガチャ…とドアが開いた。

そこにいたのはイザークだった。



何か言いたいのに言い出せないようで、唇が僅かに震えていた。

だが決心したようでその口を開いた。



「…その話…本当…なのか…?」



なぜそんなに緊張しているのか分からない。


「…え…どうして…?」


その疑問に答えたのは、奇しくもイザーク自身だった。



「…俺は…デュエルのパイロットだ…」


「…!!」


その言葉の意味に気づいた時、キラは思わず口元を手で覆った。


じゃあ…彼と自分は…殺し合っていた…?


そして思い出す。

目の前で爆散した避難民のシャトルを。


その瞬間怒りが身の内に湧き上がる。



「な…んで…?…どうして…」



言おうとした瞬間、怒りは沈んでいった。

彼は確かに殺した。

でも、私も彼の仲間を殺した。


そう思い至って、キラはイザークの瞳を真正面から見つめて、言った。




「…憎いですか…?私が…」


「…何…?」



イザークが訝しげに眉を寄せたのにもかまわず、キラは一気にまくし立てた。



「私が憎いですか?!ストライクに乗って、イザークの仲間を殺した私を…殺したいですか?!」


気づいた時、瞳からは涙がこぼれ落ちていた。


「…どうしようもなかった…みんなを守る為に、私が…私が乗らなきゃみんな死んでいたかもしれないから…!」


でもそんなのは傲慢。

私のせいで、死んでしまった人がいる。

守れなかった人がいる。



「どうして…私はっ…」



吐き出すようにだした言葉に、イザークの声が重なった。




「どうして戦ったんだ!!そんなに苦しんで!…もう、良いだろう…?」


「え…」


瞳から零れ落ちる涙を拭うことも忘れて、キラはハッとイザークを見つめた。


「…もう、やめても良いだろう…俺は、お前と戦いたくない。
 …だから…俺と一緒に…プラントに来ないか…?」


「プラント…?」

「ああ…そこなら戦うことも無いだろう?」


行きたい、そう思った。

自分と同じ同朋がいる場所へ。

けど、自分は裏切った。


そしてあそこには…

アスラン…

彼がいる…


「…行きたい…と思う…でも、私は…裏切り者…だから…無理だよ…」


そう言った瞬間、彼の瞳は悲しそうに揺れた。

罪悪感が胸に溜まる。




「…そんなことを言うなっ…俺は…お前のことが好きだっ!…だから…」


イザークは言ってから漸く気づいた。

胸のうちに溜まっていたもやもやしたものは、これだったのだ。


俺は、キラが好きだったんだと。


イザークは困惑に揺れる瞳で見つめるキラを見た。








「どうして…?」




私を好き?

沢山の人を殺した私を?




「私には、そんな価値は無い…」


「そんなことっ、一体誰が決めたんだ?!俺はお前と一緒に居たい!…お前は…嫌か…?」


「そんなこと無い!」




思わず言ってから、口をつぐんだ。


彼といて、嫌には思わなかった。それどころか彼といて不思議と落ち着いていたのだ。

その事を思い出し、キラは少しうつむいた。







うつむいたキラの顔にあるのはわずかに赤くなった頬。

それにイザークはふっと笑うと、流れるような動作でキラを腕に抱き止めた。


「!」


耳元で、イザークが囁く。


「一緒に…来てくれ…」


ああ…ダメだ…断れそうに無い。

温かい、イザークの大きな体。

包まれて体の力が抜けた。


「…行っても…いいの…?」

「…あぁ!…一緒に行こう…プラントへ…」


微笑んだイザークに、キラもまた涙に濡れた瞳でイザークに笑いかける。


「…うん…でも…一つ、お願い」


その言葉に疑問の表情がうかんだ。

キラはからかうように微笑んで言った。



「キラって呼んで欲しいの…」


「!」


目を丸くさせて驚くイザークに、キラは不安になって表情を曇らせた。


「ダメ…ですか…?」


いや、と呟いてイザークはキラの耳元に口元を寄せた。


「キラ…愛してる」


思わぬ言葉にキラはハッと目を見開いた。

しかし頬を赤らめてキラはイザークに微笑んだ。



「うん…私も…」



そしてどちらともなく唇を寄せた。

軽く触れ合うだけのキス。


でも今はそれで十分だった。

だって、これから分かり合っていけばいいから。

私達には、今があるから…





春の日差しのような微笑みを浮かべ、キラはイザークの耳元に囁いた。






大好きだよ…イザーク










あとがき
まず一言…これで終わるとか言ってすいませんー(-□-;;)>"
書いていくうちに終わらなくなりました…
一話増えてしまいました…
根気よく見てくださると感謝…m(_ _)m




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