不思議な巡りあわせで
「どうして…アスランを見ると胸が痛いのかな…」 ただ呟いただけの声に答える声があった。 「それはキラ様がアスランを好き、ということなのではありませんか?」 その声がしても、 その人物が誰だと気づいても、 麻痺した思考はその人物が言った言葉のみに反応していた。 「…私が…好き?…アスランを…?」 はい、とピンク色の髪をなびかせて、彼女は微笑んだ。 ******* 自分の情報網にアスランが倒れキラが放心状態である、という情報があった時、 ラクスは大急ぎでジブラルタルに連絡を取った。 それは本当なのか、知らねばならないのだから。 連絡を取った時、バルトフェルド隊長は突然の連絡にも、戸惑っている様子はなく。 キラ・ヤマトという人物がそこにいませんか? と聞いたとき、彼はただ、 いますよ、ここに といって、キラを通信機の前に連れてきてくれた。 ぼんやりと焦点合わない瞳。 前に会った時、彼女は限界に近かった。 そして今、まずい状況にあった。 アスランが回復しても、キラは自分を責め、壊れてしまうかも知れない。 そんなことには、絶対にさせない。 心の中で決意を固め、ラクスはキラにゆっくりと話始めた。 ******* 彼女は優しく微笑む。 それには、見覚えがあった。 アークエンジェルで… そして名を思い出した。 ラクス・クライン… アスランの…婚約者… 「ごめんなさい!!!」 「キラ…何故私に謝るのですか?」 キラは俯いたまま、ポツリと話した。 「だって…ラクスはアスランの婚約者でしょう…?…でも私のせいで…」 「キラ」 強い口調でキラの言葉をさえぎる。 びくりとキラが震えた。 キラは誤解している。そのせいでこんなにも、おびえてしまっている。 「キラは、アスランのことが好きですか?」 「え…私…」 どういう意味なのかわからない。 何でいきなりアスランのことが好きとなるのか。 キラの内心の戸惑いに、ラクスは微笑んで先を促した。 「私……」 いつも優しくて、でも怒りっぽくて。 わがままばかり言う自分に、アスランはいつも付き合ってくれた。 そんなアスランが、 「……好き」 その答えラクスは嬉しそうに微笑んだ。 「!!…ごめんなさい!こんなこと…」 「?…何故ですの?キラはアスランのことが好きなのでしょう?」 こくりと小さく頷くキラ。 「ならばいいではありませんの?」 「だって…!!アスランはラクスの…」 「婚約者…ですか?」 ぅ…と図星を指されて固まるキラに、ラクスは瞳を和ませた。 「私達は確かに婚約者ですけれど、好き、というわけではありませんわ」 「?!」 驚いて目を見開くキラを見つめる。 「アスランは、ずっと昔から、キラのことが好きなようでしたから」 その言葉に、キラはますます訳がわからないという表情をした。 「私もまた、他に好きな人がいますの」 「!!!……じゃあどうして婚約なんて…」 「私達が婚約すればプラントの人たちの希望になるから、とお父様もおっしゃいましたけど、そういうことですわ」 「そんな…」 「キラ…あなたはアスランのことが好きなのでしょう?」 「…うん…」 「でしたらアスランにそのことを言ってみてはどうですか?」 だが、キラは首を横に振る。 「アスランと戦ったから、そんなことはできませんか?」 「!!」 目を見開き、俯く。 そんなキラは見たくない。 幸せであって欲しい。 だからラクスはキラに問いかける。 「でもアスランは、あなたを庇ったのでしょう?」 「…うん」 「ではアスランはあなたのことを守りたいと思ったのでしょう。それほどの存在ということです。キラ」 「でも!!…私は…アスランにひどいことばかりして…アスランの仲間を…殺…して…」 「キラ…人は道を間違えても、また別の道に歩くことができます。キラがいつまでもその道から動かないと、進むことはできませんわ」 「!!」 「道を間違えてもいい、またやり直せばいいのではありませんか?」 キラは呆然とラクスを見つめた。 それにラクスは微笑む。 「自分の気持ちに、素直になってもいいのですよ」 「…うん…ありがとう…ラクス…」 キラの瞳から、涙が一つ零れ落ちた。 今度は悲しみではなく、喜びの。 それを見て、ラクスはキラにまた会うことを約束して通信を切った。 が、その瞬間ラクスの周りからどす黒い気が溢れる。 「フフフ…キラを泣かせるなんて……アスラン…あとでおしおきですわねw」 どす黒い微笑を残し、ラクスは次の行動へと移った。 |
あとがき
黒…最後だけ笑い…
ラクス最強ですね、私の中では。