不思議な巡りあわせで
「あれ…キラ……?」 ぐるりと周りを見渡しカガリはキラの姿を探した。 人々がざわめく町に、キラの姿はない。 もう一度良く見ると、近くの喫茶店のテーブルが銃撃戦でもあったかのように穴だらけだった。 …銃撃戦…? 「まさか…!?」 またブルーコスモスのテロでもあったのか?! そう思い至ってカガリは真実を確かめるため喫茶店へと走った。 外でテーブルの片付けをしている店員に話しかける。 「おい!ここで何かあったのか?」 店員はカガリを面倒くさげに見た後、苛立たしげに話し出した。 「何があったもなにも、またブルーコスモスのテロがあったんだよ…虎を狙って来たらしいけどな。 ったく…こっちの身にもなれってんだ…」 ぐちぐちと呟きながら再び片づけをし始める。 店員の眼中にはカガリよりも目の前の片付けの方が重要らしく、カガリを見ることもしない。 やっぱりテロがあったのか… だが、キラは…? そう思った先に店員の声が耳に届いた。 「何か知らないけど、女の子が虎を助けるし…。……?……もしかして、虎の仲間だったのか…?まあどっちでもいいか……」 「お前!その女の子ってどんな格好だった?!」 咳き込んでたずねるカガリに店員は思わず後ずさりしながら答えた。 「…あ〜…、茶髪で、白いワンピースを着てた…かなぁ…?」 キラだ! キラしかいない! 「っその子何処に言ったか分るか?!」 そう聴いた瞬間、店員は苦そうな表情をしたあと、目をそらして言った。 「…虎についていったよ」 「!!!」 黙り込んだカガリをいぶかしげに見た後、店員は再びテーブルの片付けに戻った。 …虎…だと…? キラには砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドのことを話したはずだった。 やつが私たちの…明けの砂漠の敵であることも。 なのに… 「どうして…」 考えてもろくな考えが浮かばない。 レイは、ザフトの軍人だったのか…? いや、違うはずだ。 ヘリオポリスにいたときは私服だったし… 「…くそっ!」 カガリは舌打ちしながら店から離れた。 ちょうどその時、目の前に白いものがよぎった。 「え…?」 目の前のそれは雪だった。 雪……? カガリもここ、砂漠では始めてみる雪だった。 オーブでは見たことがあったが。 雪は少しづつ世界を白に染め上げていく。 ただ、深々と降り積もる。 どくんっ 急に胸騒ぎが起こった。 っ!!…何だ…?! 雪が深まるにつれ動悸が激しくなる。 思わず膝をつき胸を押さえた。 だが急に頭に浮かんだ言葉があった。 きら キラ…?何だ…? 何なのか分らなかった。しかし徐々に頭の中で古い映画のように映像が流れる。 懐かしい風景。 懐かしい人。 はじめまして、かがり 懐かしい… 亜麻色の髪が風になびいてふわりと広がっていた。 あの子はこちらを見てどこか恥ずかしげに言う。 わたしのなまえはきらっていうの よろしくね そう言って微笑んだ顔はまるで天使みたいだった。 頭の中で何かがはじけた。 キラだ。 ああそうか…思い出した。 レイじゃない、キラだ。 俺の、たった一人の妹。 どうしてこんな大事な事を忘れていたのだろう。 ヘリオポリスで会った時気づけばよかったのに。 砂漠で会った時、あんなにも動悸がしたのは思い出しそうだったからだ。 離れ離れになった双子。 やっと出会うことができたから。 自然と瞳から涙が溢れた。 悲しいわけじゃない、嬉しい。 思い出せたことが。 カガリは暫くその場に立っていた。そうしているほか無かった。 だが… オモイダシタクナカッタ… その苦しい声は耳の奥に木霊した。 この声は 「!…キラ! カガリは走り出した。 キラのもとへ。 行ってどうするかなど分らない。 けれどそうしなければならない気がした。 キラが自分のことを覚えてるかはわからないが、それでも聞こえたのだ。 助けて欲しいと言う声が。 正確に言ってなくとも、カガリにはそう感じられた。 だから急がなくては… 向かう先は砂漠の虎が住まう場所。 |
あとがき
本当は入れるつもりではなかったのですが、あまりにもカガリの出番が少ないため急遽書き足しました。
昔にキラと会ったことがあるということにしてあります(何)