不思議な巡りあわせで





どうして…



こんなことになってしまったのかな…



ねぇ…






アスラン…
































「……あす…らん」


ぼんやりと、彼が横たわる姿を見つめた。



アスランが倒れた後、バルトフェルドさん達が素早く応急措置をしていくのを、ただ呆然と見ているしかなかった。

イザークに声を掛けられて、やっと気づいた。


自分が撃った


アスランを


この手で



震える手が血に染まる。

右手には、銃

左手いには、血


でも、その手をアスランは握っていた。

真っ赤になった手をアスランはぎゅっと掴んでいた。


まるでどこかに行ってしまうのを、とめる様に。



君は、いつでも優しいね…


アスラン…



でも




私は…







***************








「手が外れない…だと?」


不機嫌そうに呟かれた言葉に、兵士はびくりと後ずさりする。


「おい、イザーク」


「…っち…あの馬鹿め…」


キラの銃口をとっさに自分の方に向けるだと?

そんなふざけたまねをしてどうする?

レイ、いやキラのことを考えろ!


心の中で毒づいて、イザークはアスランのほうに向かった。

確かにアスランの手は握られたままだった。

キラは、それを呆然と見るばかり。


くそっ

キラがどうなるのか考えもしないでこんなこと…


だが、心の中でどう言おうと、イザークは半分は打ちのめされた気分だった。

あの時、アスランはキラが銃口をこめかみにかざしたのを見て、何の迷いもせず自分に向けた。

そうしなければ、流れ弾が自分達に当たる可能性があったからだ。

それを思いだし、イザークは眉をしかめた。


余計なお世話だっ…


思考をそこで中断し、アスランの様子を伺う。


命には別状がないようだが、すぐにでもベッドに移した方がいいかもしれない。

だが、それに問題があった。

さっきの兵士が言った通り、手を放さなければ。


キラごと連れて行くわけにはいかないしな…


そうするにはまずキラからだな…


意を決してイザークはキラに話しかける。


「キラ」


びくっとキラはイザークの方に、ぎこちなく顔を向けた。


「キラ、アスランを医務室に連れて行かなければならない。…わかるな…?」


キラは、呆然とイザークを見た。

震える体。顔は蒼白で、がたがたと震えるだけで、手を動かさない。

仕方なしに、イザークはアスランの手をはがそうと手を掛けた。が、




「やだ!!!」



それまで呆然としていたキラが突然大声を上げた。


「やだ…あすらん…いっちゃやだ…」


呂律の回らないキラの言葉に、イザークの胸がずきりと痛んだ。


「あすらん…しんじゃ…やだ…」


キラは、アスランしか目に映っていない。

何故、そのことで胸が痛むのか。

答えはわかっている。

だから…

悲しむ姿は見たくない。



「…大丈夫だ。アスランはここにいる。すぐにキラの所に帰ってくる」


「ほんとう…?」


「ああ…。だから手を放して欲しい…」


「…わかった…」


ゆっくりと、キラはアスランの手をそっと放した。

瞳から、大粒の涙がこぼれる。


「泣くな…泣いたらアスランが悲しむぞ…」


言って、イザークはキラの頭をそっと撫でた。













あとがき
やっとこさ更新。春休みだというのにバイトやらなんやらで忙しい…



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