IFの世界





キラは別の部屋につくころには落ち着いたようで、じっと黙っていた。




「…ごめんなさい…」



不意にキラがうつむいたまま言った。


「?…キラ?」


アスランは驚いてキラを見る。


「何で謝るんだ?」

「ぅ…なんとなく」


キラはぼそりと呟く。




「キ〜ラ」



アスランは苦笑してキラの頬へ手を当てた。

相変わらず頑固な所は変わってないんだな…

それは嬉しかった。
今まで戦ってはいたが、やはりキラはキラだったから。

昔と変わっていなくて可愛いままだ。

そう思うと自然に言葉が出た。



「キラ。俺と一緒にきて」




「え…?」



呆然と見つめるキラにアスランは優しく笑みを浮かべた。















アスランの言葉を耳にしながら、キラは迷っていた。

確かにアスランと一緒にいればアスランと戦わずにすむだろう。
けどアークエンジェルのみんなは…?

僕がいなければみんなが死んでしまうかもしれない。

それが怖い。

でも離れていて初めて気がついた。

アスランを失うのがそれ以上に怖い。


自分しかいない…一人ぼっちな気がして。

変だよね…ヘリオポリスにいた時はそんなんじゃなかったのに…

心の中で、でも、と呟いてアスランを真正面から見つめた。




「条件が…ある…の」




だからといって切り捨てることなんて出来ないから。




「僕がザフトに入るかわりに、アークエンジェルのみんなを助けてほしい…」




キラの真剣な瞳に見つめられ、アスランは渋々ながらも頷いた。



「…わかった。隊長に聞いてみよう」



キラをMSに乗せた連中…奴等を許すことなどできないが、キラがいうなら…と気持ちを押し殺した。

しかし問題は隊長だ。






アスランはキラをベッドに寝かせて、隊長室へと向かった。


















―シュ…
スライドしてドアが広がる。




「何だね。アスラン」


まるで待ちかまえていたかのように、クルーゼは椅子に腰掛けていた。


「あの、キラをザフトに入れる代わりに足つきのクルーの保護を…」

「かまわんよ」


すべてを見透かしたかのように即答されたじろぐ。

何もかも知っているかのような態度を畏敬すると共に不気味に思った。
しかしあっさり用件が通ったことに安心する。



「と、言うことはキラ嬢は協力すると?」

「はい。クルーの命を助けるなら、と」


キラが未だに足つきの連中のことを思っていると思うと苦々しかったが。

僅かに眉をしかめたアスランにクルーゼは微かにおや、という表情をした。
しかしすぐに笑みを浮かべる。



「?何でしょうか?」

「いや、早くキラ嬢のもとに行きたまえ一人にしては大変だろう」

「はっ」






部屋を出るアスランの後ろ姿を見送ってクルーゼはモニターを見た。


「早くしなければとられてしまうかもしれないからな」


面白げに呟いた。








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