IFの世界




部屋に戻ろうとすると中から話声が聞こえた。


誰かいる…?

またあいつらみたいなのが?!


思い至ってアスランは床を蹴ってすぐさま部屋の前へと走る。
片手でロックを叩きつけるように解除した。


「キラっ!」

「え…?」






アスランは扉に手をついたまま固まった。


ついで床を見、再び顔を上げた時、そこには絶対零度の笑みを浮かべた美麗な顔。

その視線の先には仲良くベッドの上でトランプを広げるザフトエリートパイロットとキラの姿があった。




「お前ら…」




怒声が響くかと思われた瞬間それを遮る声があった。


「あ、アスラン!お帰り」


次いでキラの眩しくなるような満面の笑み。



「ただいま。キラ」



一瞬にして表情が変化しアスランはキラに微笑んだ。






『誰だよ(ですか)お前(貴方)』


その時アスランを除く三人の意見は一致した。






「で、何でこいつらがいるんだ?」




ついと目を動かして呆れたように呟いた。



「あっあのね、アスランが出ていってからドアが開いて、いたのがこの人たちだったの。それからつまんなそうだからってトランプ遊びしてたんだ」


「へぇ―…トランプ遊びをねぇ」




楽しそうなキラに対し、アスランは冷たい目でイザーク達順繰りに見た。





「お前らでろ」





有無を言わせぬ口調で言うと、アスランは三人を外へ出そうとする。

が、そこは多少は長い付き合いのニコル。
慌ててしゃべった。


「まって下さい!僕たちにも話す権利ぐらいあるでしょう!」


「ニコルの言う通りだぜ」

「そうだ。だいたいなぁ…」




口ぐちに言う三人に怒りが上昇しアスランのこめかみに青筋が浮かぶ。
が、ここで怒る訳にはいかない。

キラがいる手前、そんな不格好なところは見せられなかった。

しかし、



「ねぇ、アスラン。僕も皆と話したいから…駄目…?」



まさに鶴の一言。



ぐっとアスランは押し黙ると、はぁとため息をついた。





「わかった。キラがそう言うなら…」



渋々ながらも頷いた。

その言葉にイザーク達三人は喋るのをやめ、アスランを見た。



「で、隊長に聞いてきたんだろ?」



分かりきったようにきくディアッカにむっとしながらも、あぁと頷くとキラの方に視線に向ける。






「キラがザフトに入るなら、足つきのクルーの命は保証するそうだ」




「本当…?!」



信じられない、といった様子でキラはほっと胸をなでおろした。



よかった…

これでみんなを助けられる…

アスランと一緒にいることができる…




キラは目尻から涙を一つ零した。





「…ありがとう…アスラン…」





ほっとしたように涙を零すキラを見て、アスランもまた安心していた。


先ほどまで、張りつめた糸のように緊張していた雰囲気が温かくなった気がしたから。

だがおそらくそれは自分の言葉だけではないだろう。



イザークたちがトランプをしてキラの心を和らげてくれたから。

あまり認めたくなかったが、心の中で感謝した。








「これからよろしくお願いしますね。キラさん」

「よろしく…」

「よろしくな、姫」



3人は早くもキラに挨拶し始めた。




「はい、こちらこそよろしくお願いします。……?…姫って…?」



その言葉にディアッカは当然とキラを見て言った。



「当然、キラのことだぜ」



「…それは…いいかも…」



アスランは呆然と呟いたが、キラは何も言えず、ただ気の抜けた表情をしていた。




「馬鹿か…」




イザークの呟きにディアッカはちらりと視線をを移し、じとーっとイザークを見ていった。




「とかいいながら実は良いとか思っただろう?」


「なっ!」





身を引き、顔を赤くするイザークに、ディアッカは一瞬目を見開き、ついでニヤリと笑った。




「…なんだ…」


「別にぃ―?」


「何だ貴様!言いたい事があるならはっきり言え!」




ディアッカの小馬鹿にした態度に元から堪忍袋が小さなイザークはぶちぎれた。




「おやおや―すぐにキレたらお姫様に嫌われるぞ」


「何ぃっ!?」



振り向いてキラを見る。

突然のことにキラは目をぱちぱちさせてその視線を受け止める。


が、それも一瞬のこと。

照れたのか、そっぽを向いた。





「キラさん。気にしないでくださいね。イザークはいつもああですから」

「何だと!!」

「違うんですかぁ?」




表情はとてもにこやかに。友好的にとも取れる笑顔でニコルは微笑んだ。

後ろには知覚できない黒いものが渦巻いて見える。

イザークと、何故かディアッカまで、それに顔を青ざめさせた。




「………………っく…あははっ…」



一連の様子に呆然としていたキラも、その様子に声を上げて笑う。


びっくりしたような表情を浮かべたあと、他の四人も同じように笑った。


笑い声が、その部屋に響いた。





その日からキラ、アスラン、イザーク、ニコル、ディアッカの5人で話す姿が見れるのは、またあとの話し。


キラをめぐってのアスランVSイザークの戦いも


全てはIFの世界…




END





あとがき
IFの世界、キラ奪還作戦でしたー(>_<)
何故だかこういうシチュエーションが好きなようです。σ(^-^;)
とはいいつつも、最近はパラレルものを読むのが好きになっています。
勿論キラは女の子(笑)
只今、不思議な巡り合わせでを執筆中ではありますが、イザークverは難しい…
お待ち頂けると恐悦至極…(何)