IFの世界









「…で、アスランはどうするつもりですか?」





追いついたニコルがきくとアスランは前を見つめたまま答えた。





「とりあえずキラと話す」





即答され思わずアスランをまじまじと見た。

こんな物言いを聞いたのは初めてだ。
今の彼には余裕が無い気がする。


ということはそれほどキラっていう人が大切…?


そう思うと"キラ"に怒りが沸いてくる。
彼がこんなに思っているのに何故彼と敵対したのか。

ふと気になってアスランに質問した。





「その…キラ…という人物について聞きたいんですが…」





ニコルが聞くと、イザークたちも気になったようで顔をこちらに向けた。

その様子にアスランは仕方ないな…とため息をついて”キラ”のことを話した。








「キラは…俺の親友だ…そして、俺が唯一愛す人だ」


『!!!!』







その言葉に全員が目を丸くし、イザークにいたっては口をぽかんと空けた。








「婚約者がいるじゃないですか!!」

「彼女とはそういう関係じゃない。…第一あれは親が一方的に決めたことで、俺は承諾してはいない」








不機嫌そうに言う彼に、ニコルたち三人は目をしぱしぱと瞬かせた。

大抵無表情でこうゆう風に言うことを聞かなかったからおどろいた。
同時にアスランのこうゆう姿が見れて嬉しく思った。







「キラは……」



言葉少なに語るアスランの姿は懐かしげで、ひどく幼く見えた。





最近様子がおかしく、元気というか覇気が無かったのはそのせいだったのか…

と納得すると同時に何故こんなに想っている彼と敵対したのかと再び怒りが沸いてくる。





そして先を進むアスランより一歩下がってイザークたちの様子を伺った。


二人、特にイザークがアスランの話すキラが気になるようだった。

始めしぶしぶといった感じが今は瞳が輝いている。





それもそのはずだと思った。


自分だって気になる。
あのストライクのパイロット。


戦場で知るのはその技量の高さと戦闘センス。

どれをおいても並みではなかった。


常軌を逸している存在。




そしてアスランの友人。

好きな人。



というか、主にそちらの方が気になる。






どんな人物なのか…






そんな感じで、キラを見てみたいと思うのはニコルも同じだった。






















やがてキラがいる部屋の前にたどり着いた。
が、




『いやあっっ!』


『おとなしくしろよ!』

『ったくこんな奴がアレのパイロットだとはねぇ』





そこまでだった。
アスランが黙って聞いていられたのは。



「キラ!!」



自動に開くドアを半ばこじ開けるようにして中に入り込む。

薄暗い部屋の奥のベッドに2人の男がキラの上に跨がっていた。


それを見た瞬間一瞬にして頭に血が上った。



「汚い手を離せ…!」



アスランは瞳に怒りを燃やし男たちを一瞥したあと、男の鳩尾へと蹴りをいれた。
男はその衝撃で壁際まで吹っ飛ばされる。


「ひっ」


もう一人の男が逃げ出そうとするがそいつの腕を掴み背中から地面に叩きつけた。

イザークたちは男たちが叩きつけられた音でハッとし男たちを取り押さえる。




「貴様ら…」


たとえ敵だろうとこんなまねをする奴等を許したくなかった。
むしろ死ね。

侮蔑の表情で男たちを見下ろして言う。




「本国についたら貴様らは1日で宙に行ける激戦区にとばしてやる」




その瞬間男達の顔から血の気が引いた。

フンと相手を睨みつけ、キラ…と連呼しているアスランへと視線を向ける。

キラとやらの顔はよく見えないが服が所々破れていることからギリギリだったのだろう。



「おい、貴様」



イザークはキラに一つ文句を言ってやろうと一歩進み出た。が、


「っ…」


キラの顔を見て、イザークは一瞬息を飲んだ。



何でだ。

あんなMSに乗る位だから、もっと屈強な人間かと思っていたのに…

これは反則だっ…



内心焦りながらイザークはキラの様子を伺う。



破られた服の間から見えるのは透き通った白い足。

手も足も華奢としか言いようのないほど細くて、その手は固く握られて真っ白になっていた。



イザークがじっと見ているとアスランは隠すようにキラを抱き寄せた。




っ…なんなんだ…


その行動にムッとし叫びたくなるがが、さすがにこの状況はまずいと思ったためすぐさま声をかける。



「おい、部屋を変えたらどうだ」



その言葉にアスラン、ニコル、ディアッカは目を見開いた。



「…何だ」



何でそこで驚くんだ。

いつまでもあんなことがあった部屋にいては駄目だろうが。


驚く三人を不機嫌そうに眉をしかめて見た。



「…あっ…、そうですね」

「そうだな…」



ほんの数秒の後に氷解した2人はすぐに動きだす。

アスランは既にキラを持ち上げ、いわゆるお姫様だっこをしていた。



キラの瞳をちらりと覗くと、綺麗なアメジストであろう瞳は焦点が定まっておらず、手足はガタガタと震えていた。

しかし、アスランが髪をひとなでするごとにその震えも収まっていった。



その様子にイザークは面白くない、と思う。


って…何だそれはっ…


思ったことを自分で否定し、イザークは別の部屋に行くためにきびすを返した。





あとがき
長かったな…今回。




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