ミエナイ未来





見えたのは


星空



それは


悲しみ



その日はやけに夕焼けが綺麗だった

























「…?」



嫌な気配がしてキラは空を仰いだ。





「あ…星…」





その瞬間、星は流れるように滑り落ちた。










ぼーっと立っていると、やけに周りが騒がしいことに気が付いた。

…何かあった…?





「大変だ!人が殺されている!」





人が…殺されている…?





「ピンク色の髪の少女らしいぜ…」





気がつけば走り出していた。




ラクスしかいない!!

何があった?!




野次馬がざわめく中、キラは人の合間を縫うように走り抜ける。

人垣を越えた先に見えたのは、血にまみれたピンク色の髪。








「ラ…クス…?」






震える足を叱咤しふらふらと近づく。

周りの人がいぶかしげにキラを見たが、そんな事どうでもよかった。




信じたくない。

でも、あの見慣れたピンク色の髪

ナチュラルではありえない綺麗だった色。


ラクスであるはずが…

そう思いたかった。


しかし、









「…!!……ラクス……」








そこで、仰向けになって倒れているのは確かにラクスだった。

死んだとは思えない程穏やかな顔で。

まるで眠っているように見えた。






「……」






そっと頬に触れる。
と、返ってきたのは、急速に体温を失っていく冷たい体。




「…ど…して…」




呻いて、拳を強く握り締めた。



どうしてラクスがこんな目に遭わなくちゃいけない?

何もしていないのに…

どうして…?


そして思い出す。






『君は裏切り者のコーディネイターだろう?』






もう過ぎてしまったことだと、しまっておいた記憶が再び浮上する。


僕の…せい…?

僕が…ここにいたから…?

生きていたから…?




「う…ぅわぁあーっっ!!!」




叫んでも、あの優しい瞳が開くことはなかった。











「ラクス…僕は…どうすればいい…?」




君を失って、僕はどうすればいい…?

傷ついた僕をいつも傍で見守ってくれた。

泣いた僕を優しく抱いてくれた。

母親みたいな、そんな風に優しかった。





理不尽になくなっていく、命。

さっきまで笑っていた人の、無残な姿。



何も…ない

何も…残らない



そして気づいた。





ここには…

みんないない



アスランも


カガリもも


みんな



ここにはいない









僕は…


一人?









世界が全て真っ黒に見えた。







いらない









凶暴な感情が胸のうちで荒れ狂う。

それを抑えることなど、今のキラにはできなかった。



大切な人

大切な時間



今この瞬間になくなった今では。






キラはラクスを置いて静かにその場をたった。

周りの人間が気づかないほど、静かに。



それは異常な光景だった。

キラの服は血にまみれ、顔色は驚くほど白い。

いくらキラの服が黒いとはいえ、服の血は明白だ。

そんな人物が傍を通っても、誰も反応しない。



そんなキラが向かう先は、目の前に聳え立つ教会。





中に入ると、孤児の子供達が、マルキオさんが、母さんが倒れていた。

母さんとマルキオさんは子供を庇うように事切れていた。


母さんの頬に触れる。

ラクスと同じように冷たくなった体。

瞳は薄く開かれ、恨めしそうにこちらを見つめていた。





「ごめん…母さん……」




瞼を手で閉じさせて、再び歩き出す。


死人のように青白い顔。

しかし唇は噛み切りそうなほどかみ締められ、血が微かににじんでいた。



そして、辿り着いた先。

そこは教会のシェルターの更に奥にあった。



パスワードを入力すると、そこには何かを置くようなくぼみがあった。



これは…


ふと、思い当たるところがあって、キラは首にかかったネックレスをはずした。

羽のような形をした、銀色のアクセサリー。

それは二年前、ラクスがお守りとして渡してくれたもの。


それが鍵なのか、まだわからない。

だが、今日出かける前にこれをもっているか確認したことが気になっていた。


意を決して、それをそこにおいてみる。






扉は、静かに開いた。





暗い道の先に光が照らす。

先に進むと、そこには白と青の色合いの機体があった。








「フリーダム…」






ラクスが渡してくれた剣。

今また、僕に力を貸してくれるのか…


蒼い機体は、静かにキラを見下ろしていた。






「自由なんて名前…」






キラは皮肉気に笑った。

ぞっとするほどの冷たい笑みで。




「結局…僕らに自由なんてなかった…」




言ってフリーダムを見上げる。




そう、何も終わってない。

終わらない。

再び見え始めた戦火の色。

きな臭い予感。

守れなかった命。


光が失われつつある、ということか。


もっとも…

光を消すのは自分かも知れない。






自嘲気味に笑い、キラはフリーダムに近づいた。


まずすることがあった。




あとがき
少し壊れ気味なキラ…
いきなり皆さん死んでおります…
次はアスランに厳しいキラ…
種デスで浮気しすぎなアスランに少しばかりいじ○を(オイ)