不思議な巡りあわせで





ドアの向こうにいたのはバルトフェルドさんと、少年二人。
刺すように見つめられレイは後ずさった。



「おやおや…キミたち相手をおびえさせてどうするんだい」



バルトフェルドさんがおどけたようにいった。


「…あの時の…」


レイがつぶやくように言うと、銀髪の少年はハッとした。
彼は突然のことに驚いているようだった。


「ほらほら。立ってないで座ったらどうだい?」


「…ふえっ?…あ、はい…」


ぼんやりとしたレイの反応にバルトフェルドとアイシャがプッと笑いだした。

「…えっ…?」

なぜ自分が笑われたのか混乱し、顔に熱が上がる。
どうしようもなくてうつむいた。


「……」


うつむいた瞬間、少女の顔が赤くなったのが見える。それを見た瞬間イザークは動き出していた。
ツカツカと歩みより、少女の前に立ちどまる。


「…?」


地面に影ができるのを見て、レイはうつむいていた顔を上げた。
見上げると銀色が目の前でさらりと揺れた。



「とりあえず座ったらどうだ」



仏頂面で言われ、レイはどうしていいのかわからず、困った表情になる。
が、イザークの淀みない眼差しがソファーの方に向けられ、あぁと気が付いた。

ゆっくりと椅子の方に近寄り、腰を下ろした。


あ…お礼を言ってない…。


慌ててレイは横を見上げて言う。



「あの!ありがとうございます」

「いや…」



照れたようにそっぽを向き、彼は金髪の少年の方に歩み寄った。

綺麗な人だな…。
前も思ったけど、すごい綺麗。
銀色の髪なんて初めてみた。

視線を送ると金髪の少年が明るく笑って手を振った。

明るい人みたい。
良かった…こんな人もいるんだ。

それを見てレイはふわりと微笑んだ。
そしてバルトフェルドさんの方に目を向ける。


「…あの…服、ありがとうございます」


アイシャによって選ばれた服をはずかし気に指で示し、軽く頭を下げた。

でもこんな高い服、いつまでも着ているわけにもいかないし、後で服を着替えよう。
心の中で深深と息をつく。


「いや、命の恩人にこれくらいはしないとね。あぁ…ところでキミの名前を聞いてなかったね。僕はアンドリュー・バルトフェルド。よろしく」


思いだしたように言うバルトフェルドさんにレイもハッと気が付いた。


「私はレイといいます」

「…?それだけかい?」

「あ…はい…記憶が無くて自分の名前も覚えてないんです…」


すいません、と申し訳そうに苦笑した。

誰も何も言えず、濁った沈黙が部屋を支配した。






「…!…すいません…辛気くさいこと言って…でも全然平気ですから気にしないで下さいね!」




そう言って両手をふって笑う。
どこか無理しているようにも見えたが、その表情に何も言えずただバルトフェルドは優しげに微笑した。

その微笑にほっと安心してレイも微笑んだ。




あとがき
やっと更新…
しかし、まだはっきりはしてない状況ですね(−−;;)



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